2024年8月6日放送 - つ:つる舞う形の群馬県


上毛かるた44枚の代表的な存在である『つ』の札。

 

この札があるからこそ県民は群馬の地形を鶴と認識していますが、 この基になったのは1900年に作られた『上野唱歌(こうずけしょうか)』という歌。

この歌の冒頭に”晴れたる空に舞う鶴の姿に似たる上野は・・・”という歌詞があり、それがこの読み札の語源と言われているのです。

 

 

またこのコーナーでも解説した通り、この札はただ群馬の形を示しているだけでなく、日本の敗戦直後に満州からシベリアへと強制連行された日本人約60万人へのメッセージが込められています。

上毛かるたの生みの親である浦野匡彦先生も戦時中は満州で仕事をしており、命からがら日本へ逃げ帰ってきました。

その為、シベリアへと抑留された仲間たちに対し、

 

『渡り鳥である鶴のように南下して来い!』

 

という願いをこの札に込めたのです。

 

 

その為、この札を語る際にはどうしても戦争のことに触れざるを得ないのですが、実はその戦争の形跡はかるたの箱にも残っています。

今、皆さんのお手元に上毛かるたの箱があれば見て欲しいのですが、”上毛かるた”という文字の横に『児童福祉法推薦文化財』と書かれていますよね。この『児童福祉法』とは何か、皆さんはご存じでしょうか?

 

 

 

児童福祉法は、終戦間もない1947年12月に公布された法律。

当時、戦争で親を亡くしてしまい、家もなく路上で暮らしていた孤児たちが全国に12万人もいたと言われています。

その為、生きる為に窃盗や空き巣などを繰り返す子供が後を絶たず、社会問題となっていたのです。

 

そんな中、次世代の日本を担う子ども達の健やかな成長と、最低限の生活を保障する為に制定されたのがこの法律であり、保育全般や児童相談所、障がいを持つ子の支援などが事細かく定められました。

 

 

そしてこの法律の第8条には、児童福祉を図る為の芸術や出版物の推薦について触れられているのですが、これに基づき、発行から5年後の1952年に上毛かるたは児童福祉法推薦文化財に指定されたのです。

もちろん当時、同じように指定された文化財は他にもあるのですが、ほとんどは本や映画などであり、子供の遊び道具であるかるたが推薦されたのはかなり異例だったのです。

 

 

また上毛かるたの箱を見ればわかる通り、この箱はお世辞にも高級感のある作りとは言えません。

ただこれは当時、貧しい家庭でも買えるようにと製造原価を抑えた為であり、日本が経済成長してからもこの考えを踏襲し、今でも上毛かるたの箱は当時と同じ質素な作りをしているのです。

 

 

上毛かるたが発行されて今年で77年。このかるたで育った子供たちは今や群馬県内のみならず日本全国、いや世界各地で活躍しています。

 

 

 

2024年8月6日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

 

 

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊