国の名勝、及び天然記念物に指定されている藤岡市鬼石町の三波石峡と、1年に2度、春と冬に咲く桜山公園の冬桜。
三波石峡はその美しい景観から江戸時代には既に観光名所として栄えており、またここで採掘される三波石は庭石として高価格で取引されていました。また桜山公園も花の咲く時期になると多くの観光客が訪れます。
この札はその鬼石町の2つの名所を詠んだ札です。
さて昨年このコーナーで『さ』の札を紹介した時は主に冬桜のことについてお話しましたので、今回は『三波石』にスポットを当てたいと思います。
そもそもこの三波石、青緑色の岩に白い縞模様があるのが特徴であり、かつて日本庭園を造園する際には欠かせない存在だったのですが、何故このような綺麗な岩がこの地域にたくさん存在するのか、皆さんはご存知でしょうか?
それを知る為には、実は約3億年の時間をさかのぼり、日本列島ができる前にタイムスリップする必要があります。
学生時代に地学を勉強した方はご存知と思いますが、三波石峡の近くには『中央構造線』という断層が走っています。
『断層』とは大きな力が加わってできた地層のズレのことを指しますが、この中央構造線は関東から九州まで800kmほどある世界でも一、二を争うとても長い断層であり、またこれは日本がまだアジア大陸の一部だった約3億年前にできた事が分かっています。
そしてこの断層を境として、両方の層が1億年もの歳月をかけて少しずつズレていった結果、溶岩や火山灰が高い圧力を受けてできた地下深くの岩石が地上付近に露出した訳です。
これがいわゆる『三波石』であり、地質学的には『三波川変成岩』と呼ばれ、日本列島がどうやって形成されたのかの手がかりとなる非常に重要な場所なのです。
ちなみに先ほど申し上げた通り、中央構造線は関東から九州まで延びていますので、同じような岩石はこの断層沿いであれば他の地域にも存在します。
現に和歌山や四国でも白い縞模様の岩が確認されているのですが、これらの岩の名称も同じ『三波川変成岩』です。
なぜ四国の岩なのに群馬の三波川の名前が付くのか?と言うと、19世紀後半に東京帝国大学の地質学者が三波川を調査してこれらの岩を見つけたのが全てのきっかけだからです。
皆さんの想像以上に、群馬の『三波川』、『三波石』という名は世界の地質学者に知れ渡っています。
そして以前も申し上げましたが、三波石峡にある岩は全て天然記念物ですので、どんな小さな石でも持って帰ると罰せられます。
是非行って景観を楽しんでいただきたいのですが、ポケットに石を入れないようお気をつけください!
2022年6月14日
M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』
KING OF JMK代表理事 渡邉 俊