この札は沼田市の片品渓谷にある『吹割(ふきわれ)の滝』を詠んだ札です。
その名の通り、岩の軟らかい部分を片品川の流れが徐々に侵食して割れ目のような形が生じ、あたかも巨大な岩が吹き割れたように見えるところからその名が付けられました。
日本全国には様々な滝がありますが、このような形状は非常に珍しく、昭和11年に『天然記念物および名勝』に指定されています。
またこの話をすると、『あれ?”ふきわれ”だったっけ?”ふきわり”じゃなかったっけ?』と思う方も多いかもしれませんが、実は2000年(平成12年)に発行された上毛かるたから『ふきわり』の詠みを『ふきわれ』に変更しています。
理由はこの滝の正式名称が『”ふきわれ”の滝』だからなのですが、特に地元の方々は『ふきわり』と呼ぶことが多いようですね。
さて、この『吹割の滝』には昔から滝つぼが竜宮へ通じているという伝説があることを皆さんはご存知でしょうか。
これは先日からこの番組でも紹介されている『絵本 上毛かるた』でもそのことが書かれていますが、実はTBSで放送されていた「まんが日本昔話」の中でも1980年に『龍宮の椀』というタイトルで市原悦子さんの語りと共に紹介されていました。
昔この滝の付近の村では祝儀などの振舞ごとがあるたびに滝の底にある竜宮様から膳椀を借りていました。
膳椀が必要になるたびにそのお願いの手紙を書いて滝の底に投げ込むと、祝い事の前日の夜に頼んだ数の膳椀が滝の横の岩の上に置かれるのだそうです。
そして無事に祝儀が終わったら三日以内にお礼の手紙をつけてもとの岩の上に置くといつの間にか消えてなくなる。そんな風にして村の人々は竜宮と共に生活をしていました。
ところがある日、平助という村人が借りた膳椀を返す際に『1つくらいならいいだろう・・・』と考え、1つの椀を納戸に隠してしまいました。
すると竜宮は貸した椀の数が不足していることに怒り、以降誰がどんなに丁寧に頼んでも貸してくれなくなってしまったという話です。
ちょっとした出来心が取り返しのつかない事態になってしまった訳ですが、
しかし、この返さなかったお椀は『竜宮の椀』と呼ばれ、実は今でも一般の方の家で保管されています。
一般の家なので場所は公開されておらず、見学することはできないそうなのですが、ちょっと面白い話ですね。
もう昔の話ですので、今ならば竜宮の方々も必要とあらば膳椀を貸してくれるかもしれません(笑)
ただし先ほども申し上げた通り、現代では『吹割の滝』は国が指定している名勝ですので、むやみに手紙を投げ込むと怒られます。お気をつけて!