2021年6月8日放送 - せ:仙境尾瀬沼花の原


この札は本州最大の湿原である尾瀬沼と尾瀬ヶ原を詠んだ札です。

昭和9年に日光国立公園の一部として指定されたのですが、現在は分離されて『尾瀬国立公園』として管理されています。

また札にある『仙境』とは”仙人が住む美しい場所”という意味なのですが、私個人的にはこの”仙境”という言葉で尾瀬を表現している所がとても好きです。

というより、上毛かるたがすごいのは各詠み札に採用されている言葉のセンスだと思っています。

 

 

上毛かるたのようにその土地の郷土愛を育む為に作られたものを『郷土かるた』と呼びますが、全国にはこのような郷土かるたが1800以上あると言われており、またその多くが上毛かるたをお手本にして作られています。

そして、かるたを作る際のポイントの1つとなるのが『詠み札の表現』です。

 

 

上毛かるたを含めほとんどの郷土かるたは五七五調、または七五調で作られているのですが、詠みたいことを簡潔に伝えるにはやっぱりセンスが必要であり、正直言いまして言葉のセンスのないかるたは世の中にたくさんあります(笑)

その点、あの尾瀬の景観をたった漢字2文字で『仙境』と表現したのは、私が言うのも何ですがとても素晴らしいと思う訳です。

 

 

ちょっと話が逸れてしまいましたが、この尾瀬沼・尾瀬ヶ原一帯、実は『日本の自然保護の原点』と言われている事を皆さんはご存知でしょうか?

実は昭和初期の頃までは尾瀬はそれほど有名ではなかったのですが、昭和24年に作られた曲『夏の思い出』(夏が来~れば思い出す~遥かな尾瀬~とおい空~)が大ヒットした事で尾瀬の名前は一躍全国に広まり、多くの観光客が訪れるようになります。

 

 

しかしそうなると問題になるのが『ゴミ』。

昭和30年代に入ると登山客が急増し、尾瀬ヶ原周辺に捨てられたたくさんのゴミが自然破壊につながるとして当時大問題となりました。

そこで昭和47年から尾瀬で開始されたのが、日本で初となる『ゴミ持ち帰り運動』。登山客が出したゴミは全て各自で持ち帰る事がルール化され、当時尾瀬に設置されていた1400個以上のごみ箱が全て撤去されました。

今も尾瀬は、国立公園の中で一番利用規制の厳しい『特別保護地区』に指定されております。

自動車の乗り入れが規制されていたり、木道以外の場所が歩けなくなっていたりするのも全て尾瀬にしかない自然を保護する為なのです。

 

 

 

ちなみに尾瀬の木道ですが、以前古くなった木道を加工して上毛かるたの札に再利用されたこともあります。かるたの箱に『尾瀬の木道を再利用しています』と書かれているものがそうなので、是非家にあるかるたの箱をチェックしてみて下さい。